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「井の中の蛙大海を知らず」─ことわざのコトを考えてみた

「井の中の蛙大海を知らず」

このことわざを耳にすると、どんな情景が思い浮かびますか?

たぶん多くの人が、「狭い世界に閉じこもって、広い世界を知らない哀れな存在」というようなイメージを持つのではないでしょうか。

「井戸の中にいる蛙」は、井戸の外にある広い世界を知らずに生きている。
だから、その蛙の考えや視野は狭く、未熟で、愚かだ。

そういう使い方をすることわざだと、教わってきたように思います。

たしかに、より広い世界を知ることで得られるものはたくさんあります。
見える景色が増えることで、価値観が広がり、思考の柔軟さも生まれる。

「井戸の中」にしかいなければ決して触れられないような知恵や出会いも、
「大海」にはきっと満ちていることでしょう。

でも、ちょっと考えてみると違った見方もありそうです。

目次

井の中は狭い?

そもそも──井戸の中にいるその蛙自身は、
「自分の世界が狭い」なんて思っているのでしょうか?

毎日、空を見上げて、鳥の声を聞き、
水の中を泳ぎ、時折の雨に感謝しながら、
自分のペースで生きている。

その暮らしの中に、不満や欠乏感はあるのでしょうか。
「大海を知らない」という事実は、
その蛙にとって“不足”なのでしょうか。

むしろ、知らないからこそ、満ちていられる。
外の情報に振り回されることもなく、
自分の世界の中で、自分なりの幸せを感じながら、日々を重ねている。

その姿は、哀れどころか、むしろ穏やかで、堂々としてさえ見えます。

反対に、外からその蛙を眺めて「哀れだ」と思っている側の私たちは、どうでしょうか。

広い世界を知ってしまったことで、
比較の苦しさや、情報の多さによる不安、

「もっと知らなければ」という焦りに駆られていないのでしょうか?

世界は果てしなく広く、深く、複雑で、
知れば知るほど「自分はまだ何も知らない」と感じてしまうこともあります。

もしかしたら、「井の中の蛙」を哀れだと思ってしまうとき、
それは「自分が抱えている疲れ」や「焦り」や「孤独」が、
他者を下に見ることでバランスをとろうとする、そんな心の動きかもしれません。

「狭い世界しか知らないお前は不幸だ」

というふうに、言外に語ってしまうその裏には、
「広い世界を知っている自分は正しい」と思いたい気持ちがある。

けれど、それって、本当に「豊かさ」と言えるのでしょうか。

幸せかどうかは、世界の広さでは決まる?

誰かが言います。

「住んでいる世界が広い方が幸せだ」

本当にそうでしょうか。

「自分の世界の中で、心が満ちているか」
それこそが、生きる上での“豊かさ”の本質。

井戸の中には井戸の景色があり、井戸の音があり、
井戸の時間の流れもある。

大海にあるものと違っていても、
そこには確かに、その蛙だけの“世界”がある。

そして、それは誰かが外から決めつけられるものではなく、
その蛙自身がどう感じて生きているか、
それが大事なのではないかと思うのです。

大海を知っているからこそ、気づけることもある。
だけど、大海を知らないからこそ、守られるものもある。

見ている世界が違うということと、
生き方として“劣っている”ということは、まったく別の話ですよね。

わたしたちが見ている“外側”からの視点だけで、
誰かの生き方を「哀れだ」と思ってしまったとき──
もしかするとそれは、見ている自分自身の視野の狭さを、
物語ってしまっているかもしれません。

広い世界を知っているのに、心がとざされてしまっているとしたら。
井戸の中の蛙よりも、自分の方がずっと、不自由なのかもしれません。

“狭い”のは何?

「狭さ」って、空間のことじゃなく、心のあり方のことかもしれませんね。

井の中に住んでいても、大海に住んでいても、結局のところ本人が幸福感を感じているか?が大切。
そしてそれは他人から決められる様なものでもない。

井の中で暮らしているというその状態は、
よいとか悪いとかではなく、ただそこにある“ひとつのあり方”なのかもしれません。

そして「井の中の蛙大海を知らず」という言葉も、ただその状態を表しているだけのただの言葉です。
この言葉をどういう意図でどんなタイミングで使うかによって、意味が変わってきそうです。

このことわざは一般的にあまり良くない意味で使われるものですが、
むしろそれを使うわたしたちの心のほうが、
ときに“狭く”なってしまっているコトもあるのかもしれませんね。

終わりに

このブログでは、
「よく考えてみたら、〇〇じゃないかな?」という
身近なことをゆるやかに思索しています。

今回は「井の中の蛙大会を知らず」ということわざを、
ゆるっと考えてみました。

不定期・気まぐれ更新ですが、
またふと思い出したときに、ふらっと立ち寄っていただけたら嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ではまた、次の記事でお会いしましょう。

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